第39週
バッタを倒しにアフリカへの表紙

ノンフィクション・人生論

バッタを倒しにアフリカへ

前野ウルド浩太郎

光文社(光文社新書)

この一冊で何が変わるか

「好きなことを仕事にするなんて甘い」という常識が揺らぐ。安定の外側で夢を追う人間の姿に触れることで、自分の心が本当に向かいたい方向へ、一歩踏み出す勇気が湧いてくる。

私は、バッタに食べられたい。それが幼い頃からの夢だった。

こんなに笑えて、こんなに熱い新書はそうない。著者は「バッタ博士」こと前野ウルド浩太郎さん。アフリカで大発生し農作物を食い荒らすサバクトビバッタを研究する、正真正銘の昆虫学者だ。

物語は、博士が単身アフリカのモーリタニアへ旅立つところから始まる。研究室でバッタを飼うだけでは飽き足らず、野生のバッタに会いに、いきなり砂漠の国へ。しかし待っていたのは修羅の道だった。肝心のバッタが大干ばつで姿を消す。研究費は尽きかける。無収入のポスドク、崖っぷちである。それでも博士は、砂漠でバッタを追い続ける。

この本のすごさは、深刻なはずの状況が、なぜか抱腹絶倒に描かれることだ。現地の相棒との珍道中、サソリを食べ、青いターバンを巻き、「バッタに食べられたい」と本気で願う。ふざけているようで、その裏には、好きなことに人生を賭けた人間の、まっすぐな覚悟がある。笑って読んでいるうちに、胸が熱くなっている。

これは昆虫の本であり、アフリカ冒険記であり、そして何より「好きを仕事にして生きる」ことの、リアルな記録だ。安定も保証もない。それでも、心が震える方へ進んでいく。読み終えると、自分の人生にも少しだけ、無茶をする勇気が湧いてくる。

週に一冊。それだけでいい。今週は、声を出して笑いながら読める一冊を。

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