第43週
ファストフードが世界を食いつくすの表紙

ノンフィクション・人生論

ファストフードが世界を食いつくす

エリック・シュローサー(楡井浩一 訳)

草思社(草思社文庫)

この一冊で何が変わるか

「安い・早い・便利」を無条件に良しとする感覚が揺らぐ。日々口にするものの背後にある生産・労働・環境のコストに目が向き、自分が何を選んで食べるのかを考えるようになる。

一国の食べ方を知れば、その国のありようが見えてくる。

ハンバーガー、フライドチキン、フライドポテト。安くて、早くて、どこで食べても同じ味。私たちの暮らしにすっかり溶け込んだファストフード。だが、あの均一な一皿の裏側で、いったい何が起きているのか——それを徹底的に暴いたのが、この世界的ベストセラーだ。

著者はアメリカの調査報道記者、エリック・シュローサー。彼は数年をかけて、ファストフード産業のあらゆる現場に潜り込む。香料会社の研究室、巨大な食肉処理場、低賃金で使い捨てられる労働者たち、そして子どもを狙い撃ちにするマーケティング。見えてくるのは、「おいしさ」も「安さ」も、緻密に設計された仕組みの産物だという事実だ。あのポテトの香りは、工場でつくられた人工香料かもしれない。

とりわけ衝撃的なのは、食肉処理の現場の描写だ。効率を極限まで追求したラインで、何が衛生を脅かし、誰が危険にさらされているのか。読んでいると、自分がこれまで何気なく口にしてきたものの「背景」を、まるで知らなかったことに気づかされる。

これはファストフードを断罪するだけの本ではない。「安くて便利」の裏側で、私たちが何を差し出しているのか——農業も、労働も、健康も、食の多様性も。効率を最優先する社会そのものへの、静かで鋭い問いかけだ。読み終えたあと、次の一口は、きっと少し違う味がする。

週に一冊。それだけでいい。今週は、いつもの一皿の裏側を覗く一冊を。

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