ノンフィクション・人生論
なぜ働いていると本が読めなくなるのか
集英社(集英社新書)
この一冊で何が変わるか
「本が読めないのは自分の意志が弱いからだ」という思い込みが消える。読書から離れた原因を社会の側から捉え直すことで、自分を責めずに、もう一度本と向き合うきっかけが得られる。
働きながら本を読める社会を、あきらめたくない。
学生の頃は、あんなに本を読んでいたのに。働きはじめてから、めっきり読めなくなった——そんな心当たりのある人に、この本は刺さる。というより、この本はまさに、あなたのために書かれている。
著者の三宅香帆さんは文芸評論家。「仕事に追われると、なぜか本が読めない。でもスマホは見てしまう」。この誰もが抱える謎に、彼女は真正面から挑む。しかも解き方が面白い。明治から現代まで、日本人が働きながらどう本を読んできたかを、時代を追ってたどっていくのだ。
見えてくるのは、これが個人の意志の弱さの問題ではない、という事実だ。「もっと成長しろ、もっと役に立て」と急かす社会が、いつのまにか私たちから、本を読む余白を奪ってきた。読めないのはあなたのせいじゃない。そう言われると、少し肩の力が抜ける。
では、どうすればいいのか。三宅さんが出す答えは「半身で働く」。仕事に全部を注ぎ込むのをやめ、人生に、本を読む余白を取り戻す。この提案には、賛成も反論もあるだろう。けれど、自分にとって読書とは何だったのかを、あらためて考えさせてくれる。
週読が毎週一冊を届けているのも、たぶん同じ願いからだ。忙しくても、週に一冊なら。読めない自分を責めず、また少しずつ、本のある生活を。
週に一冊。それだけでいい。今週は、読書と仕事の関係を問い直す一冊を。