第45週
砂糖の世界史の表紙

ノンフィクション・人生論

砂糖の世界史

川北稔

岩波書店(岩波ジュニア新書)

この一冊で何が変わるか

「あたりまえにあるもの」を疑う目が養われる。一さじの砂糖の背後に貿易・労働・植民地の歴史が見えてくることで、日常のモノの来歴を想像し、世界のつながりを捉える視点が手に入る。

砂糖のあるところに、奴隷あり。

コーヒーに入れる一さじの砂糖。お菓子の甘さ。あまりに当たり前にそこにある砂糖が、かつては王侯貴族しか口にできない「白い黄金」だった——そう言われても、ピンとこないかもしれない。だが、この一冊を読むと、その一粒に数百年の世界史が詰まっていることがわかる。

著者は西洋史の大家・川北稔さん。砂糖を「世界商品」と呼び、その広がりを軸に近代史を丸ごと描き直していく。もともとは珍しい薬や贅沢品だった砂糖が、ヨーロッパ人の欲望に火をつける。より多く、より安く作るために、カリブ海の島々に広大なサトウキビ農園が開かれ、そこで働かせるために、アフリカから膨大な数の人々が奴隷として連れてこられた。「砂糖のあるところに、奴隷あり」——甘さの裏には、むごい現実があった。

そして砂糖は、イギリスの労働者の紅茶に溶け込み、産業革命を支えるエネルギー源にもなっていく。大航海時代、植民地、三角貿易、産業革命。教科書ではバラバラに覚えた用語が、砂糖という一本の糸でつながり、いきいきと動き出す。その鮮やかさが、この本の醍醐味だ。

ジュニア新書だから、中学生でも読める平易さ。それでいて、大人が読んでも世界の見え方が変わる。身近なモノを一つ、とことん掘り下げるだけで、これほど世界が広がる——知的好奇心の原点を思い出させてくれる一冊だ。

週に一冊。それだけでいい。今週は、一さじの砂糖から世界史をたどる一冊を。

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