第33週
エッセイ・人生論
年収90万円で東京ハッピーライフ
筑摩書房(ちくま文庫)
この一冊で何が変わるか
「もっと稼がないと」という前提が、一度ゆるむ。支出を減らすことは我慢ではなく選択だと気づき、お金を増やす方向だけでなく、欲を減らす方向からも人生の余白をつくれるようになる。
やりたくないことをやめたら、やりたいことがちゃんと残った。
週に二日だけ働いて、年収は90万円。それで東京で、たぶんあなたより機嫌よく暮らしている人がいる。
著者の大原扁理さんは、都心から離れた郊外に部屋を借り、家賃を抑え、自炊し、図書館に通う。介護の仕事を週二日。残りの五日は、散歩をしたり、本を読んだり、ただぼんやりしたりして過ごす。これを彼は「隠居」と呼ぶ。若くして、東京で、である。
無理して切り詰めている、という感じがしないのがこの本の不思議なところだ。我慢の記録ではなく、幸福の記録として読める。お金をたくさん稼いで、たくさん使う。その前提を一度外してみたら、意外なほど身軽で、満ち足りた暮らしがあった——彼はそれを、恨みも気負いもなく、淡々と書く。
「もっと稼げ、もっと成長しろ」という声に、少し疲れている人へ。これは怠けの本ではない。自分にとって本当に必要なものは何かを、生活のレベルで問い直す本だ。読み終えると、財布の中身ではなく、一日の使い方のほうが気になってくる。
週に一冊。それだけでいい。今週は、肩の力が抜ける一冊を。