第40週
ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たちの表紙

ノンフィクション・人生論

ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち

河合香織

小学館(小学館文庫)

この一冊で何が変わるか

一杯のワインの見え方が変わる。銘柄や値段の向こうにある「造り手の情熱と苦闘」に思いが至るようになり、本物を生み出すことに人生を賭ける生き方の尊さが、静かに胸に残る。

海外の銘醸地にコンプレックスを感じながら日本でワインを造る時代は終わった。君たちは本気で、海外に負けないワインを造りなさい。

かつて日本のワイン造りは、世界の常識から大きく外れていた。ワイン用ではない生食用のぶどうを使い、海外から輸入した果汁で造ることも珍しくなかった。「日本で本物のワインなんて無理だ」——それが当たり前の空気だった時代の話である。

その常識に、たった一言で火をつけた人物がいる。醸造家・麻井宇介(あさい・うすけ)。彼は若者たちにこう言った。「海外に負けないワインを、君たちが造りなさい」。その言葉に人生を賭けた三人の若者——岡本英史、城戸亜紀人、曽我彰彦。彼らは自らを「ウスケボーイズ」と名乗り、無謀とされたワイン用ぶどうの栽培から醸造までを、一貫して手がけ始める。

道は、想像を絶して険しい。畑は病気に襲われ、天候に裏切られ、収入は乏しい。それでも彼らは、まるで修道士のように畑と向き合い続ける。この本の胸を打つところは、成功譚として描かれていないことだ。迷い、挫折し、それでも諦めきれずに土に還っていく——その不器用な姿そのものが、読む者の心を掴んで離さない。

これはワインの本であると同時に、「本物を、この土地で造る」ことに人生を捧げた男たちの物語だ。何かに打ち込んで生きるとはどういうことか。その熱が、ページから静かに伝わってくる。読み終える頃には、一杯のワインの向こうに、造り手の途方もない情熱が見えるようになっている。

週に一冊。それだけでいい。今週は、一本のワインに人生を賭けた男たちの一冊を。

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